2012年に発生した、笹子トンネルの天井板崩落事故は、社会に大きな衝撃とともにインフラ・メンテナンス時代の到来を告げました。この事故に始まるインフラ・メンテナンス時代の始まりにおいて、道路法の改訂も実施され、インフラの老朽化問題がクローズアップされております。さらに、近年の自然災害発生の増大、激甚化は大きな社会問題となり、「国土強靭化」と強く語られるきっかけともなりました。老朽化と災害対応はセットであり、ともにインフラにとって重要な社会課題であります。
そして現在は、「インフラ・メンテナンス第2ステージ」とは言われているものの、世の中は未だに、作る時代のしくみ、考え方であり、点検に関しましては多くの資格ができ、国土交通省認定資格制度も実施されております。しかし、これは始まりに過ぎません。今や、新たな時代に向けて、点検の先に行かねばなりません。つまり、実際の補修、補強の実行と、新たなインフラ・マネジメントをさらに加速していく必要があります。
これらのインフラの老朽化問題において、「マネジメント・サイクル」とはよく聞くものの、本当の意味でのサイクルの実行はできておらず、点検で止まってしまっています。真のインフラ・マネジメントがなかなか語られないし実行されておりません。かつて「永久構造物」と言われていた、PC、コンクリート構造物や鋼構造物においても必ず老朽化、そして寿命は来ます。運用中におけるリスク・マネジメントも含む考え方が必要であり、この、運用中のマネジメントには補修、補強、監視などもを考えていかないとならない時代になってまいりました。
本来のインフラ・マネジメントでは、適正な、補修、補強や監視は必須であり不確定の要素も含めたリスク・マネジメントが必要になります。社会の状況を鑑みると、点検は重要だが、点検の先に行かねばならない時代に突入したと言えます。的確な補修材料や補修法に関して、的確に実施できることが重要であり、さらには、センサー技術を活用したモニタリング技術による監視ということも重要になってまいります。維持管理の本丸は補修・補強であります。構造物が、安全に共用できるのか否かの判断。この判断は診断と言われてはいるがこれもなかなか困難であります。
当協会は補修・補強に関する材料・技術、センシングを活用したモニタリング技術、さらには、群マネや包括管理におけるマネジメント技術など、泥臭いところから先進的な技術までの専門業者が集う組織であり、技術部会などにおいて検討・議論を行い、世の中の動きにあった、維持管理技術の研鑽に努め、真の意味での持続可能な社会に貢献できる組織を目指している、より実務的な団体であります。2011年の設立以来、地道な活動をしてまいりましたが、今後さらに、皆様方の、ご支援とご協力を得て、よりよい社会の実現に貢献していく所存でございます。
理事長 植野 芳彦